ベニバナヤマシャクヤク (紅花山芍薬)

ベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)の第一印象は、小さくて鮮やかで可愛いかった。

蕾を固く閉じている姿も、またいじらしくていい。

純白のヤマシャクヤク(山芍薬)は、清楚で上品な貴婦人という感じだが、ベニバナヤマシャクヤク (紅花山芍薬)は、若くて可愛い女の子である。でも、艶やかさは負けてない。

濃い紅色の可愛い花を咲かせる。花が開くとだんだんと薄い色になって、開いたらあっという間の2、3日で散ってしまう。儚い命の花である。

画像ベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)の名は、日本史上、最初の統一政権である大和朝廷の時代に中国から渡来した、シャクヤク(芍薬)に葉の形や蕾が似ていて、山に自生して花の色が真っ赤な紅色していうことから、ベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)に由来する。

ヤマシャクヤク(山芍薬)は、江戸時代の「大和本草」、「物品識名」、「綱目啓蒙」には、薬用に用いられていたという記述がある。「日本産物志」には、田舎芍薬として、ヤマシャクヤク(山芍薬)の根を乾燥したものが、丹波、伊勢の薬草として。また、木曽のヤマシャクヤク(山芍薬)は、蒸して乾かしたものを使い、両方が、田舎芍薬として薬舗に出たという記述がある。

ボタン科ボタン属の多年草で、学名は「Paeonia obovata」である。属名のは「Paeonia」は、ギリシャ神話の「医の神」の「Paeon」の名に由来し、「Paeon」はオリンポス山から取ってきた芍薬の根によって、黄泉の国王「Pluto」の傷を治したことにちなみ、種名の「obovata」は「倒卵形の」を意味している。

画像北海道から九州に分布し、日当たりのよい低地~山地の樹林内に生えている。ヤマシャクヤク(山芍薬)の紅花と思われがちだが、ヤマシャクヤク(山芍薬)とは明確な違いがあり、花柱がヤマシャクヤク(山芍薬)の3本に対して5本あって、先が強く外側に巻き込んでいる。

樹高は40~50cmくらいになり、茎は真っ直ぐに直立し、葉は2~3枚が、1ツの節に1枚ずつ生じて、互いに方向を異にしている互生し、2回にわたって3ツに分かれる複葉で、小葉の先は細まって尖っており、葉の裏には軟かい毛がある。

5~6月、茎の頂きに花径が4~5cmの大きな花を1個つけ、上向きに開き1重咲きである。花色は名のとおり淡紅色で、花びらは5~7枚。萼片は3~4枚で花柱は5本あり、長く伸びて先端が外側に巻き込んでいる。淡紅色の可愛い花を咲かせるが、花が開くとだんだんと薄い色になり 2、3日で散ってしまう。

画像果実は袋果で、熟すと裂ける。内面の赤い部分は不稔の実で、紺色の種子をつける。草地改良や藪化などにより生育地が減少し、また、花の美しさから盗掘の対象となり個体数が激減している。環境省のレッドデータでは絶滅危惧IB類に指定されている。

ベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)には2種類あって、葉の裏に毛のあるのが 「ベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)」と葉の裏に毛のないのが 「ケナシベニヤマシャクヤク(毛無紅花山芍薬)」といわている。

シャクヤク(芍薬)は、死者の国の王の病も治すほどの万能薬と遠い昔からいい伝われてきた。名前の通り、生薬名「芍薬(シャクヤク)」といい、漢字の「芍」は味が良いを意味している。シャクヤク(芍薬の根は、消炎や鎮痛、抗菌、止血、抗けいれん作用があり、漢方ではポピュラーな生薬として、葛根湯や十全大補湯、大柴胡湯、当帰芍薬散など多くの漢方方剤に配合されている。また、吃逆にも効果的といわれている。

画像話は変わりベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)なので、シャクヤク(芍薬)に関わる秋田県雄勝郡小野伝わる「百夜通いの伝説」。
平安時代の女流歌人、小野小町は、出羽国福富の荘に郡司として派遣された小野良実の娘として、809年に桐の木田(現在の雄勝町小野字桐木田)で生まれた。幼時から歌や踊りや琴や書道などが上手だった小町は13歳の時、役目を終えて都へ戻る良実と一緒に都へ出て宮中に仕えた。小町は天性の美貌と才能で帝の寵愛を受け、多くの求婚者があったが、妬まれる事も多く、小町は36歳の時に都の暮しを捨てて故郷へ戻った。
 
小町を愛する深草の少将は、小町のあとを追って小野の里へやってきて求婚した。小町は少将には直接は会わず、「私を心から慕って下さるなら、土手にシャクヤク(芍薬)を毎日1株ずつ、100株植えて欲しい。100株になりましたら御心にそいましょう。」と伝えた。少将は毎日シャクヤク(芍薬)を1株ずつ植え続けたが、100日目の夜に嵐で増水した川に橋ごと流されて死んでしまった。小町は深く悲しみ、99本の芍薬に99首の和歌を捧げた。その後、小町は別当山の岩谷洞にこもって静かな余生を送り、900年に92歳で亡くなった。

ちなみに、小町が少将に会わなかったのは、その頃、疱瘡を患っていたからだそうである。100夜のうちに治るようにと、磯前神社の清水で顔を洗って祈っていたそうである。また、「百夜通いの伝説」には、シャクヤク(芍薬)ではなく、カヤ(榧)の実の登場する伝説も残っている。

画像どうしてこのような豪華な花が自然に山地で自生しているのだろうか。山地では極めて珍しい、園芸品種のような大きく派手な花である。花は余り大きく開かないが、花の中はものすごく賑やかで、花を揺らすと多数の黄色い雄蕊がイソギンチャクのように揺れる。雌蕊の先の濃いピンク色の柱頭も印象的である。この花を一目見たら、誰しも山野草の虜になるのではないだろうか。

非常に限られた山地や森の中に自生するので、めったに目にすることはない。盗掘によって激減している花なので、撮影場所を明らかにする事は控えたい。毎年、この花を見るために訪れる場所があるが、今のところ目だった盗掘はされずに、のびのびとすばらしい花を咲かせている。今年もたくさんの花や蕾に出会うことができた。いつまでもこのままで残したい花の筆頭株である。

花言葉は威厳、荘厳、はにかみである。

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