トリカブト (鳥 兜)

奥多摩、雑木林の登山道の奥で見つけた紫の花、これが御存知トリカブト(鳥兜)の花である。

鳥が兜をかぶったようなユニークな形で一度見ると忘れることはない。

トリカブト(鳥兜)で連想するのは、やっぱり保険金殺人やカレー事件(これは砒素)ではないだろうか。その美しい花の姿とは裏腹に、すべての部位に毒が含まれる。かつては、忍者などがこの植物から毒薬を作ったともいわれている。

花が咲いてると間違えることはないが、春などに山菜採り時に間違いないようにしないといけない。

画像トリカブト(鳥兜)という名前は、花の姿が舞楽で楽人のかぶる鳳凰の頭をかたどった冠(鳥兜)や、古来の衣装である鳥兜、烏帽子に似ていることからとも、鶏の鶏冠に似ているからともいわれる。

中世ヨーロッパでは、トリカブト(鳥兜)のことを「狼を殺すほどの毒性を持つ」ということから「狼殺し」、すなわち「ウルフズベイン(Wolfs bane)」と名付けられた。また、イギリスでは花の形が修道士のかぶるフードに似ていることから、「モンクス フード(Monk's hood):修道士のフード」、同じく花が兜に似ていることから「ヘルメット フラワー(Helmet flower):兜花」と呼ばれることもあるようである。

ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシャ神話では、地獄の番犬ケルベロスの涎から生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。

画像きんぽうげ科トリカブト属の多年草で、学名は「Aconitum japonicum var. montanum」である。属名の「Aconitum(アコニタム)」は、ギリシャ語の「akos(楯)」が語源(諸説あり)にちなみ、種名の「japonicum」は「日本の」、小名の「montanum」は「山の」を意味している。

中国原産で日本では本州や東北~中部にかけて分布し、低地の草原や山地の林縁、沢筋などの比較的湿気の多い場所に自生している。日本には約30種自生している。

画像このトリカブト(鳥兜)が極めつけの毒性を持つということは、かなり昔から知られていた。
古代ギリシアの博物学者テオフラストスは、この毒草について、著書「植物誌」の中で、「根は形と色がクルマエビのようで、その中に人命を奪う力がある。数ヶ月、半年、1年、あるいはそれ以上でも、定められた期間内に生命を奪うよう調整できる」と記している。ほかにも、古代ローマの医師ディオスコリデスは、著書「薬物誌」の中で「狼を捕まえるのに、生肉にトリカブト(鳥兜)を包んだものを用意した」という事例を紹介している。

ギリシア神話によれば、トリカブト(鳥兜)は地獄の門を守る3ツ首の魔犬ケルベロスの涎から生まれたとされている。この犬は、かって英雄ヘラクレスによって、地獄からいったん太陽の下へ引き出され、苦悶のあまり涎を垂らすのだが、その涎の跡からトリカブト(鳥兜)が生えてきた、といわれている。

また、別の話では、魔女メディアが同棲相手だったアイゲウスの息子テーセウスを、トリカブト(鳥兜)この草で毒殺しようとして、未遂に終わったというエピソードがある。

画像日本では、トリカブト(鳥兜)は和名を「附子(ぶす、ぶし)」「烏頭」「天雄」といわれ、古くから矢に塗る毒の1ツとして使用されていたことが分かっている。

「古事記」や「日本書紀」には、神武天皇の兄の五瀬命や日本武尊が、この毒にやられたことが記されている。また仲哀天皇(日本武尊の息子、神功皇后の夫)や東北の豪族・安倍頼時なども、トリカブト矢の餌食になっている。平安時代の「吾妻鏡」には、伊貝八郎入道という人物が、何者かにトリカブト(鳥兜)の毒を塗られた矢を射掛けられ、急死したという話が残っている。

「一休のとんち話」には、和尚さんが貰った砂糖を舐められないために、砂糖の入った容れ物に「舐めると死ぬ毒」という意味で「附子」というラベルを貼ったという話が出てくる。ただ、その工夫も空しく、「大事な壺を割ってしまったお詫びに死のうとした」一休たちに、その砂糖は全部舐められてしまうのだが。

ちなみに、「附子」を使用すると、呼吸困難などの他に、顔面がこわばるなどの作用が出る場合がある。そのため、後世に、こわばったようなおかしな顔の持ち主を「附子」と呼ぶようになり、やがて不細工な女性のことを「ブス」と表現するようになった……という話である。尚、この言葉は、本来男女双方のことを指す言葉であったはずだが、近世から女性にのみ使用されるようになる。理由は不明である。

画像アイヌ民族もトリカブト(鳥兜)を使う習慣を持っており、狩猟の際には、矢を鹿の足骨で作り、鏃にトリカブト(鳥兜)を煮詰めて作った毒を塗り込んだと記録には残っている。ちなみに、現在の静岡県東部はかつて「駿河」と呼ばれていたが、これはアイヌ語でトリカブト(鳥兜)を表す「スルク」が語源であるともいわれている。かって富士山麓には、厖大な量のトリカブト(鳥兜)が自生していたそうである。

古代ローマでは、しばしばトリカブト(鳥兜)は「継母の毒」と呼ばれた。これは夫の連れ子を殺すのに、この毒がしばしば使用されたことに由来するものである。余りに多くの人々が毒殺されたので、ローマ皇帝はしばしばトリカブト(鳥兜)の栽培禁止令などを発することもあったようである。

作家チェーホフが集めた詩の中には、流刑囚がトリカブト(鳥兜)のことを歌ったものがある。
「誇り高げに生いし草 その葉は青く 美しく 医学に知らるるトリカブト この毒草の地下の根は
神の手ずから植えしもの 人を惑わすこと多く 墓場にまでも導きて 黄泉の臥床に送り込む」(チェーホフ 「シベリアの旅 サハリン島」 神西清訳)

サハリン(樺太)に送り込まれた重罪人の中には、絶望のあまりトリカブト(鳥兜)をあおって死ぬ者も少なくなかったそうである。

花言葉は美しい輝き、厭世家、人嫌い、復讐、騎士道、栄光などである。


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