クサボケ (草木瓜)

公園の雑木林の陽のあたる片隅で、小さなクサボケ(草木瓜)が花を咲かせている。

地面に接するようにして咲く花は赤に近い朱色、ふっくらとした姿は、なんとなく幼げで可愛らしい。

草ではないのにクサボケ(草木瓜)という名はこんな印象によるのでだろうか。これはちゃんとした木だから、花も少し大人らしく見える。表情豊かな花である。

画像「ボケ(木瓜)」の仲間の「クサボケ(草木瓜)」は朱赤色の花を咲かせる。別名は「カラボケ(唐木瓜)」というが、「クサボケ(草木瓜)」の別名は「ノボケ(野木瓜)、シドミ、コボケ(小木瓜)、ジナシ(地梨)」がある。「ボケ」の名前の由来は中国名の木瓜が転訛して、和音読みになったもので、クサボケ(草木瓜)は、木の背丈が短く1m前後にしかならない。それで、こんな木姿を大袈裟に草に喩えてクサボケ(草木瓜)にしたとある。

ばら科ボケ属の落葉小高木で、学名は「Chaenomeles japonica」である。属名の「Chaenomeles(カエノメレス)は ギリシャ語の「chaino(開ける)と「melon(リンゴ)」が語源で、「裂けたリンゴ」の意味にちなみ、種名の「 japonica」は 「日本の」を意味している。

画像中国が原産で平安時代に日本に渡来し各地に広がった。本州の関東地方以西、四国、九州に分布し、丘陵や山地の日当たりのよい雑木林の縁や、田畑の周辺や土手などに自生いている。花をつける個体の高さは様々である。人の手のよく入る場所では、草刈も行われるので草丈数センチ。明るい林の中などでは30cm~1mくらいになる。

茎の下部の方は、よく枝分かれをして地面を這うような形になっており、地面についたところは1部、地下茎になる。また、小さな枝は刺状になるが、これは、枝の生長が途中で止まったもので、まだ若い状態では刺はよく分からないこともある。

画像葉は短い枝に輪状につくか、長い枝に節ごとに1枚ずつ方向を異にして互い違いに生える互生をしている。早めに出た葉は少し青緑色、新しく出た葉は黄緑色。両面とも毛がなく独特の光沢がる。形は葉の中央より先端寄りが最も幅が広い倒卵形で、先は丸く、葉の縁は鋸の歯のようなギザギザが斜め前方を向いて揃っている鋸歯状、長さは2~5cm、葉柄は3~10mmの長さである。長い枝につく葉は腎臓形の鰭がついたように見える小さく丸っこい托葉がよく目立つ。

開花時期は春の4月~5月と秋の9月~10月ごろ。花の咲き始めは、葉の展開よりも早め。花は前の年の枝の葉の脇につき、地面に近い下部の枝の腋に3~5個束になる付いている束生している。 花は雌性花と雄性花があり、雄花は花弁5で円形、色は朱赤色、雄蕊は多数、径1.5cm程。雌花は長楕円形で7~10mm程の大きさである。雄蕊は多数、花柱は15~17mmで、雌性花は子房が太く花柱が長いようである。秋になる果実は黄緑色に熟し、球形で約3cm程の大きさ、噛むと酢っぱい味がする。

画像話は変わってクサボケ(草木瓜)なので、ボケ(木瓜)に関わる伝説。
群馬県の「冠稲荷」にある樹齢400年といわれるボケ(木瓜)の木の子宝伝説。
昔、子供に恵まれない夫婦が毎日お参りをしていた。すると、或る時、修験者の老人が2人にボケ(木瓜)の実を授けた。2人でそのボケ(木瓜)の実を食べたところ、まもなく子宝に恵まれた。夫婦はお礼に境内にボケ(木瓜)の木を植えた。それが現在の冠稲荷のボケ(木瓜)の木だと伝えられている。この伝説から、このボケ(木瓜)は、子宝、縁結び、健康長寿などの御利益があるとされている。毎年美しい花を咲かせ、祭りの日には、この木瓜の実でつくったボケ(木瓜)酒が与えられるそうだ。

また、茨城県牛久市の南西にある牛久沼の中央に突き出た泊崎にある泊崎大師堂は、大同年間(806~810年)に弘法大師(空海)が泊崎に来て、千座護摩をおさめたところに建てたと伝えられ、縁結びと長寿に御利益があるとされている。現在の社殿は寛保4年(1744年)に再建されたものである。弘法大師が泊崎を訪れた時に通った山道のボケ(木瓜)は、その時以降、実がならなくなったとされ、泊崎大師堂周辺にある弘法の7不思議の1ツとされている。

画像ちなみに文学上で描かれたボケ(木瓜)の話。
夏目漱石の「草枕」には、「ボケ(木瓜)は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。そんなら真直かと云ふと、決して真直でもない。只真直な短かい枝に真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構へつつ全体が出来上って居る。そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さへちらちらつける。評して見ると(ボケ)木瓜は花の中で愚にして悟ったものであろう。世間には拙を守ると至ふ人がある。この人が来世に生まれ変わると、きっと、ボケ(木瓜)になる。余もボケ(木瓜)になりたい」と描かれている。

有吉佐和子の作品の1ツに「ボケ(木瓜)の花」がある。これは同じ作者による「芝桜」の続編。「芝桜」では全盛期の花柳界を舞台に、真面目な主人公の正子と奔放な蔦代という2人の芸者を対比させて人生模様が描かれている。「ボケ(木瓜)の花」では、正子は旅館の女将として堅実な生活をしているが、相変わらず、蔦代との腐れ縁が描かれている。

ボケ(木瓜)を詠った俳句
「木瓜咲くや 漱石拙を 守るべく」 夏目漱石
「木瓜の雨 ほのかに鯉の 朱もうかぶ」 水原秋桜子

花言葉は熱情、平凡、妖精の輝き、魅感的な恋である。


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