イヌビエ (犬 稗)

イヌビエ(犬稗)は気の毒な名前だ。

栽培されているヒエ(稗)に似ているが、食料にならないと言う理由でイヌという名が付いたという。

畑や水田、道端、空き地など至るところで見られる。穂先に天道虫が止まり、風が吹くたびゆらゆらと揺れていた。天道虫にとってはブランコのことだろう。

画像イヌビエ(犬稗)の名前は、稗に似ているが食用にならないので、犬という名前がついている。(利用価値がない植物にはしばしば「犬」という名前がつけられる)

いね科イヌビエ属の1年草で、学名は、「Echinochloa crusgalli」である。属名の「Echinochloa」は、「echinoa(ウニ)と「chloa(草)」で、開出した芒(のぎ)の形からの連想している。種名の「crusgalli」は、「鶏の距、鶏の足」を意味している。

日本の北海道や本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、台湾などに広く分布し、水田や道端、草地、荒地など、やや湿ったところに自生している。

草丈は高さ80~120cmくらい。基の部分で枝分かれわしている。葉は長さ30~50cmで、幅1~2cmの細長く両縁がほぼ平行で平たい帯状の形をした線形でざらついている。葉の形や色については変化が多く、葉縁が白色で肥厚するものや、縁が紫色になるものがある。基部の葉鞘はやや赤みを帯びる。葉舌はまったくない。

画像開花時期は7~10月ごろ、茎への花のつき方や並び方、花の集まっている部分の花序は、長さ10~25cmで、短い枝を沢山出し、緑色~紫褐色の小穂を密につける。小穂は長さ3~4mの卵形で、先は鋭くとがり、普通は芒はなく、あっても短い。両性の小花は光沢のある淡黄色である。

他にタイヌビエ(田犬稗)などの変種があるが区別は難しく、ここでは区別をしていない。ケイヌビエ(毛犬稗)は芒の長さが2cm以上あるとされる。

小穂の長さは3~4㎜。芒の長さは不定で、ほとんど無いものを狭義のイヌビエ(犬稗)、芒が特に長いものをケイヌビエ(毛犬稗)と区別していたが、中間型が様々あり、区別しないことが多くなっている。第1苞頴は小さく、鈍三角形。第1小花の護頴は膨らまない(腹が平ら)。ヒメイヌビエ(姫犬稗)は全体に小型の変種で、小穂の長さは2.5~3mm、芒はほとんど無い。タイヌビエ(田犬稗)は第1小花の護頴が膨らみ、小穂が大きい。タイヌビエ(田犬稗)のように、第1小花の護頴が膨らむ小型の変種をヒメタイヌビエ(姫田犬稗)という。このイヌビエ(犬稗)、ヒメイヌビエ(姫犬稗)、タイヌビエ(田犬稗)、ヒメタイヌビエ(姫田犬稗)の4種は総称してノビエ(野稗)と呼ばれる。

画像「万葉集」には、ヒエ(稗)を詠んだ歌が2首存在するが、内容から見てイヌビエ(犬稗)ではないかと言われている。ちなみに、万葉集では、ノビエ(野稗)として登場している。

山上憶良が詠んだ次の2首の歌がその由来とされている。
「の野に 咲きたる花を  指折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」 万葉集・巻8 1537

「ハギノハナ(萩の花)、オバナ(尾花)、クズバナ(葛花)、ナデシコノハナ(瞿麦の花)、オミナエシ(女郎花)、また、フジバカマ(藤袴)、アサガオノハナ(朝貌の花)」の歌は、山上憶良が、秋の野に咲く代表的な花を数え上げた秋の七草である。
 
万葉の時代から、現代に至るまで幾人もの人が、様々な秋の七草を数え上げてきたが、万葉集(第8巻)に詠まれた山上憶良のこの七草を越えるものは現れなかったように思われる。春の7草は、7草粥に供される実利的な植物が選ばれているのに対して、秋の七草はそれを摘んだり食べたりするものではなく、主に眺めて楽しむ花としての価値で選ばれたもののようである。

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